理事長ブログ

2015年02月02日
フッ化物によるむし歯予防

8020運動(80歳で20本の歯を残し、なんでも自分の歯で食べましょうという運動)が平成元年に提唱されて以来四半世紀が過ぎました。歯・口の健康は全身の健康と大きく関連し、特に高齢になってからの自立して生活する能力や生活の質の維持に不可欠なものであることが明らかになってきました。むし歯と歯周病は歯を失う第一要因であり、これを予防することが健康な生活を維持することにつながります。むし歯予防はその第一歩といえるでしょう。
<早期発見・治療では遅い?>
 ところで歯にはむし歯にかかりやすい時期があります。それは歯の生えはじめから約5年間であり、ほとんどのむし歯はこの時期に出来ます。つまり人間の一生で言えば乳幼児から中学生くらいまでの間に発症を予防してしまえば、その後にむし歯にかかる可能性はかなり低くなることがわかっています。
 一方でむし歯になった歯の多くは治療によって歯を保存する処置を受けますが、生涯という長い期間で見た場合、生活習慣や口腔衛生状態が変わらないと、むし歯は再発してしまい、修復処置を繰り返しながらむし歯は重症化する傾向があります。
フッ化物の利用法
①フッ化物配合歯磨剤・フッ化物イオンスプレーやフォーム(泡剤)
②フッ化物洗口
③フッ化物歯面塗布法
①②の方法では、フッ化物が歯の表面でフッ化物イオンとなり、歯の表面が非常に溶かされにくい状態になると共に、再石灰化といって歯にカルシウムやリンを取り込み、酸で溶かされた歯を修復します。
 フッ化物配合歯磨材は、薬局・スーパーなどで市販されています。ただしうがいの出来ない低年齢児向けの歯磨剤は歯科医院で取り扱っていますので相談してみると良いでしょう。フッ化物洗口液は歯科医院でフッ化物洗口指導を受けた時に入手出来ます。薬局でも販売されていますが、歯科医院で洗口指導を受け、指示箋を受け取ってから購入しましょう。
 ③の方法では、歯の表面にフッ化カルシウムという膜ができて、これが毎日少しずつ唾液(だえき)の中に溶けていって、フッ素イオンの供給源となります。供給されるイオンの濃度は低いのですが、24時間口の中に存在するという利点があります。個人差はありますが生成されたフッ化カルシウムは数ヶ月ですべて溶解してしまいますから定期的に(3~4ヶ月に1回)塗布する必要があります。
 またこの方法は家庭で行うことはできず、歯科医院で歯科医師が行うか、歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が行います。
フッ化物塗布を歯科医院で受ける場合、「う蝕多発傾向者(むし歯が出来やすい人)」と判定された場合やシーラントなどの予防処置がある一定本数処置された場合は保険適用となりますが、そうでない場合は自由診療(全額自己負担)となります。
 ①②の利用法と③の利用法では予防のメカニズムが異なりますので、この方法を併用するのが最も効果的です。
<フッ化物はいつまで利用する?>
 フッ化物のむし歯予防効果は、生えたばかりの歯に最も大きく現れますが、最近では、成人の歯根面(しこんめん)むし歯(歯の根の部分のむし歯)にも予防効果があるという研究報告もあり、フッ化物の利用は一生続けるべきといわれています。また、歯列矯正中の人や、ブリッジ・部分入れ歯を装着した人も、口腔清掃が難しいため、利用したほうが良いでしょう。
 現代人の食生活と砂糖は切っても切れない関係にあります。また砂糖の入った甘いおやつを子どもに与えないというわけにはいきません。さらに実際むし歯になる場所は、歯ブラシの毛先が届きにくいところということもあって、これまで一般的だった歯磨剤を使わない歯みがきや甘味制限では予防効果が上がりません。
 フッ化物を適切に利用することで、健康な歯を手に入れましょう。
 当院では霧島市のルタンはうす、都城市のハーミィ小児矯正歯科の両院で、フッ素塗布をはじめ、フッ化物洗口法の指導、フッ化物歯磨剤の使用法についてのアドバイスが出来ますのでお気軽にご相談ください。